ごあいさつ

日本病院・地域精神医学会理事長 蓑 島 毅 智
 コロナ禍を含む3期9年間にわたり学会を率いてこられた山下俊幸前理事長の後を受け、このたび理事長に就任いたしました。ここにご挨拶を申し上げます。
 現在、本学会は会員数の減少や、総会・大会への参加者数の伸び悩みといった大きな課題を抱えています。しかしながら、私は本学会ならではの変わらぬ魅力が今もなお確かに息づいていると感じております。
私にとっての病地学会の原風景は、2010年11月6日に開催された第53回総会・大会(東京)における理事会企画シンポジウム③「日本の精神保健医療福祉改革をどう進めるか」です。座長は金杉和夫前々理事長と木村朋子理事、シンポジストには加藤真規子元会員、寺田一郎元会員、中島豊爾元会員、広田和子元会員、関口明彦理事、小沢温元会員、澤温元会員、伊藤哲寛元会員という錚々たる顔ぶれが揃っていました。
 当事者、支援者、研究者、地域、病院など、さまざまな立場や拠点をもつ論者たちが、歯に衣着せぬ明快な主張を率直に述べられていました。シンポジストの発表後には、会場に集まった参加者も交えた質疑応答・討論が行われ、熱い激論が展開されました。私は冷や冷やしつつも、ドキドキしながらその議論に引き込まれていったことを覚えています。
 本当に喧嘩が始まるのではないかと心配になる場面もありましたが、時間が来て終了した瞬間、論敵同士と思えたシンポジストたちがふっと肩の力を抜き、笑顔で挨拶を交わされる姿に深い感銘を受けました。
 当時の私は、学会への参加歴も浅く、学会の雰囲気を知らない段階でした。けれど、あれほど斟酌なく、爽快に持論をぶつけ合い、議論を交わし、それでいて終われば和やかに仲間へと戻れる。その姿を目の当たりにして、大きな興奮と感動を覚え、本学会の在り方に深く魅了されたことを、今でも鮮明に覚えています。
 病地学会は、職種や立場、拠点にとらわれることなく、多様な背景を持つ人々が集い、「現場」へのまなざしを常に意識しながら、「こうありたい」「こうではないか」といった心の声を出し合い、議論できる場であると考えています。これこそが、いわば「病地らしさ」ではないでしょうか。
 1957年に「病院精神医学懇話会」として設立されて以来、68年の歳月を経て、当事者やご家族、研究者、各職種の方々が一堂に会する機会は、今では他にも珍しくないものとなりました。しかし、その中でも、本学会における独自のありようは、今なお誇るべき特徴だと確信しています。
 専門化・細分化が進み、それぞれの分野で貴重な活動が行われている昨今ですが、本学会はそうした「縦割り」ではなく、むしろ「横断的」なつながりを大切にし、本音で語り合える場としての意義を失っておりません。その魅力は、決して色褪せることなく、確かに存続していると感じています。
 長谷川副理事長をはじめ、理事、評議員、監事の皆さまと力を合わせ、この大切な財産を次世代へと引き継ぐべく、微力ながら尽力してまいる所存です。
 会員の皆さまにおかれましても、本学会の良さや魅力を今一度思い出していただき、今後とも共に学会を盛り立てていただきますよう、心よりお願い申し上げます。
2025年6月
日本病院・地域精神医学会
理事長 蓑島 豪智
 このたび日本病院・地域精神医学会の副理事長を拝命いたしました。長谷川利夫と申します。
 当学会は、前身の病院精神医学懇話会から数えて60年以上の歴史をもつ学会であります。その立ち位置は“在野”であり、一貫して“人権”を大切にしてきた学会と言えるのではないかと思います。
この60年余りの間、精神保健医療福祉に関わる新たな“職種”ができたり、国が様々な“制度”を作って施策を推進することが行われてきています。それには良い面もあると思いますが、往々にして自主性やクリティカルな精神が減退し、もっとも大切なものを見失い、見えないものを見る努力をしなくなっていく面もあると思います。
そのような状況下、私たちは常に原点に立ち返り、あるべき精神保健医療福祉は何か?そのために我々は何をすべきか?どのような社会を作っていくべきかを常に問い、行動していくことが大切だと思います。
蓑島新理事長と共に新たな“病地学会”のページが開かれるよう、最大限努力をしていきたいと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
日本病院・地域精神医学会
副理事長 長谷川利夫