日本病院・地域精神医学会理事会声明

2011年6月12日
日本病院地域精神医学会
理事長 白澤 英勝

東日本大震災の被災地における地域精神保健医療福祉の再構築に向けて

 東日本大震災の被災地における地域精神保健医療福祉の再構築に向けて (日本病院・地域精神医学会理事会声明)  東日本大震災は地震、津波、加うるに原発事故により、東日本に甚大な被害をもたらしている。震災後3ヶ月が経過するが、死者・行方不明者は2万3千名余を数え、今なお10万余の被災者が長期にわたる避難生活を余儀なくされ、被災地では生活や健康面での深刻な問題に直面している。
 精神保健医療福祉分野でも地域で生活する精神障がい者はもとより、地域精神保健の担い手である保健所や市町村保健センターは壊滅的被害を受けたところもみられ、また、医療機関も宮城で津波により2ヶ所、福島では原発事故により3ヶ所の病院が閉鎖を余儀なくされている。
 これまで数多くの精神保健医療福祉関係者から多大な支援、援助の手が差しのべられてきたが、今後予想される震災関連ストレス疾患を含め、被災者のメンタルヘルスの保持増進、必要とする精神医療や精神障がい者への福祉サービスの提供は多くの関係者の支援を必要としており、国は被災県や被災市町村に財政面を含め継続的な、実効性ある支援を行い、被災県や被災市町村においては復興計画の中に精神保健医療福祉の再生のための具体的内容を盛り込む必要がある。そのため、当学会は被災者への継続した支援と共に、以下を地域精神保健医療福祉の再構築に向けての重要課題とすることを声明するものである。

  1.  精神障がい者が地域生活を安心して送るために、生活基盤を強化すること。具体的には入・通院費の長期にわたる減免措置を講ずると共に、グループホームや通所施設を仮設を含めて確保すること。遠方への避難者には避難先市町村において福祉サービスの提供に特段の配慮を行うこと。
  2.  地域精神保健の基盤強化を図ること。具体的には被災者並びに被災精神障がい者のメンタルヘルスの保持増進を図り、震災関連ストレス疾患やうつ病、アルコール関連疾患、自殺等の予防や治療を適切に行うために保健所、市町村の精神保健担当者の増員を図り、相談や訪問等的確に行うための機能を充実させること。
  3.  地域精神医療の充実を図ること。具体的には地域の精神科病院や診療所に多職種からなるチームを設置し、地域の関係機関との連携を図り、訪問や往診などアウトリーチ機能を充実させるべく必要な措置を講じること。また、原発事故や津波等により地域精神医療崩壊地域には早急に精神科診療機能を有する地域医療体制を確立すること。
  4.  今震災において、宮城、福島の両県では精神科病院が閉鎖せざるを得ない事態に陥り、多数の入院者が遠隔地に避難入院せざるを得なかったが、今後の予想される大規模、大災害に向けて、避難プロセスに関する検証を行うこと。

以 上